これまでの人生で、手に入らない成功や不本意な評価、漠然とした生きづらさなどに悩まされたことはありませんか?「その原因は、実は、不安や怒りにまかせて他人を責めてしまう『外化』という心理メカニズムにある」と語るのは、早稲田大学名誉教授の加藤諦三さんです。今回は、加藤さんの著書『人はどこで人生を間違えるのか』から一部を抜粋しお届けします。
お金を持っているのにノイローゼになる人たち
フロムが言うように、人は他者との関わりなしには正常でいられない。しかし、外化によって他人と関わる方法を失った人々は、虚無感を覚え、無意識のうちに他者に対する攻撃的な行動を取る。
こうした行動は、しばしば自分の人生の中で最も重要なものを見失った結果として表れる。家族や仕事、子どもが大切ではないという感覚が生まれ、嫌がらせを通じてのみ他者とつながろうとする。
このような状況は、特に隣人や同僚、親しい人との関係においても見られることがあり、嫌がらせをすることで自分の存在価値を感じようとする。結局、敵対している人だけが自分の人生に意味を与え、イライラを静めてくれる存在となるため、嫌がらせを止めることはできないのである。
大切な視点は、無意識の部分でどのような代価を払っているかということである。相手の関心を得て、尊敬を得たとしても、それ以上の代価を無意識の部分で払っていることがある。
人々からの賞賛を得たとしても、無意識の部分で代価を払っているため、お金や権力を持ちながらもノイローゼになる人がいる。
逆に、お金がなくても権力がなくても楽しく生きている人は、無意識の部分で代価を払っていないからこそ、楽しく生きることができるのである。