何を言っても否定する、学歴を自慢する、理路整然と自分の意見をまくし立てる…なぜ人はマウントを取りたくなるのでしょうか。精神科医・片田珠美さんは「不満や怒り、羨望や嫉妬などのネガティブな感情が往々にして潜んでいる」と指摘します。マウントを取る心理について、著書『マウントを取らずにはいられない人』より一部抜粋して紹介します。
なぜ理路整然マウントを取らずにはいられないのか
30代の専業主婦の女性は、庭付き一戸建ての家を購入することにしたものの、いざ新居が出来上がる直前にいろいろ考えて眠れなくなったということで、私の外来を受診した。
夫は「~までに、ああして、こうして。そのためには~くらいお金が必要だから、~くらい貯金して」と人生設計をきちんと立て、その通りに物事を進めないと気がすまない質(たち)のようだ。
妻が少しでも異議を唱えると、夫は理路整然とまくし立てるとか。
家を購入することを決めたのも夫の一存で、インフレが進行する前に買っておかないと高くなるからというのがその理由だったようである。
この女性は、どうせ買うのなら駅から近いマンションのほうが便利なのにと思ったので、それとなく言ったが、夫から一戸建ての家のほうがいい理由を理路整然と列挙され、一言も言い返せなかったという。
そのうえ娘の幼稚園はどうすればいいのか、引っ越してからママ友とのつき合いをうまくやっていけるのか、駅まで遠いので車を運転しなければならないが、ずっとぺーパードライバーだったので怖いなどと考え込んでいるうちに眠れなくなったというわけである。