身近に生える植物たちには、図鑑には書かれていない多くの秘密があります。そこで今回は、雑草学を専門とする、静岡大学大学院教授・稲垣栄洋さんの著書であるエッセイ風ミステリー『雑草教室-図鑑が教えてくれない植物たちのひみつ』から一部を抜粋し、「植物サークル」の学生たちとともに植物の謎を解明していきます。稲垣教授は、メンバーの岡山さん、出雲さん、瀬戸田くんと「ホトケノザ」の秘密に迫るそうで――。
ハチは花粉を運ぶ昆虫の中ではもっとも優秀な存在
昆虫は、やみくもに花にやってくるわけではない。それぞれに好みの花がある。
植物の方はパートナーとなる昆虫を呼び寄せるために、その昆虫の好みにあった花を咲かせようとする。植物の花にさまざまな色や形があるのは、そのためである。
植物の花は何気なく咲いているわけではない。その色や形には、必ず合理的な意味がある。
たとえば、ホトケノザはハチの仲間を呼び寄せようとしている。
ハチは花粉を運ぶ昆虫の中ではもっとも優秀な存在である。何しろ飛ぶ力が強いから、遠くまで花粉を運ぶことができる。さらに、ハチは昆虫の中では頭が良い。そのため、同じ種類の花を識別して、花を訪れることができるのだ。花の花粉は、同じ種類の花に運ばれて、初めて受粉に成功する。そのため、ハチの行動は植物にとっては、すこぶる都合が良いのだ。