ハチにだけ蜜を与えたいホトケノザ

「ハチって頭が良いんですね」

岡山さんが感心して聞いた。

『雑草教室-図鑑が教えてくれない植物たちのひみつ』(著:稲垣栄洋/中央公論新社)

「そうだね。だから、ハチを呼び寄せようとする花は多い。そこで、ホトケノザは、たっぷりの蜜を用意してハチを呼び寄せようとしているのだ」

「学校の帰りにホトケノザの蜜を吸ったことがあります」

自然豊かな場所で生まれ育ったという出雲さんが懐かしそうに言った。

「ただ、問題がある」

稲垣教授が改まった言い方をした。

「たっぷりの蜜があると、ハチ以外の昆虫も集まってきてしまう」

「それは、そうですよね」

「しかし、花としては、ハチにだけ蜜を与えたいと思うよね」

「そう思います」

「だとすると、どうやってハチだけに蜜を与えればいいだろうね」

「ハチだけに蜜を……そんなことできるんですか?」

「実際に、ホトケノザはそれをやっているのだよ」

稲垣教授の質問はこうだ。

どうすれば、ハチだけに蜜を与えることができるだろうか?