演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第43回は俳優の鹿賀丈史さん。劇団四季を退団し、松田優作さんの相棒役で映画デビューをした鹿賀さん。そして『レ・ミゼラブル』出演のきっかけとなったのは――。(撮影:岡本隆史)
松田優作さんの相棒役で
80年、鹿賀さんは劇団四季を退団し、映像の世界に活動の拠点を移す。これが第2の転機になるのだろうか。
――そうですね。浅利さんに四季を辞めたいと伝えたのは春先でしたが、その秋にジロドゥの『オンディーヌ』を、三田和代さんと僕のハンスでやる予定だったんです。
その頃、ちょうど黒澤明監督の『影武者』のオーディションをやってる時期で、映画のほうも受けてみたいので『オンディーヌ』はできません、って言った。「いや、受けりゃいいじゃないか」って言われたけど、やっぱり辞めます、ってなって。
そうしたら、「3年間は舞台に出るな」って言われました。今思うと、チェッ、なんだろうな、と思いますけどね(笑)。『影武者』のオーディションには結局行けませんでした。