(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
50代は、経済的なことや健康のことなど、これからの人生についてリアルに考え始める人も増えてくる年代です。レストランガイド「東京最高のレストラン」編集長の大木淳夫さんは、「50代は残された時間を豊かに過ごすスタート時点として大切な時期。だからこそ美食を趣味にするといい」と語ります。そこで今回は、大木さんの著書『50歳からの美食入門』から一部を抜粋し、中高年の外食における楽しみ方をご紹介します。

あえて「レストラン道」があるとすれば

店を楽しむ名人になる

「レストラン道」というと大仰ですが、せっかくですからこれから数十年、美味しい食事を楽しむための目標を立ててみませんか? 学校でも社会に出てからも、計画を立てましょうとか、予算必達! などとさんざん言われてきたとは思いますが、それとは別です。

人生を謳歌するための目標は「お店を楽しむ名人になる」です。

名人とか達人のような道を究めた人って、いつも笑顔で包容力がありますよね。あんなイメージでレストラン道を進みましょう!

では早速、具体的にどうするかです。小山薫堂さんの名エッセイ「一食入魂」はご存じでしょうか。私は書籍『随筆 一食入魂』(2004年/ぴあ)の編集を担当したのですが、小山さんはあとがきでこう記してくださいました。

「自分はおいしいものが食べたくて、日々、店を探しているのではない。いい時間を過ごしたくて、いい店を求めているのだ。いい時間とは、料理人の思想を知ることであり、友人と楽しい会話をすることであり、自分自身に人生を問いただすことである。つまりそれが、人間の原料となるのかもしれない。」

求めるのはこの境地です。いい時間を過ごすためにといっても、高い店ばかりに行く必要はありません。小山さんはこの本の中でひたすら食べ歩きますが、お弁当やアイスクリームにも感動しています。大事なのは「どんな時も食べることを楽しもう!」という、自分の意志と好奇心です。そうすれば、100円のお菓子とだって真剣に向き合うことになります。

私も特に予定がない昼や夜、仕事をしながら食事の1時間くらい前から脳内でマップを開き、ひたすらシミュレーションをしています。まず、お前はどこに行きたいんだ、何を食べたいんだと自分に問いかけます。すると「そういえばあの餃子がまた食べたいな」とか、「今日はグラスワインの安くてうまい店で、とことん飲みたい!」なんて目的が定まってきます。ターゲットを目指してぐるんぐるんと情報が頭を駆け巡り、仕事のふりをして端末を叩いて確認をし、入魂の一食を探すのです。