(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」によると、令和6年は合計で160万5378人が亡くなり、前年から2万9362人増加したそうです。「多死社会」といわれる日本で、人はどのように死を迎え、その過程では何が起こっているのでしょうか。今回は、検視官として3年間で約1600体の遺体と対面した、立教大学社会デザイン研究所研究員・山形真紀さんの著書『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』から一部を抜粋し、現代社会が抱える課題に迫ります。

高性能すぎるセンサーの落とし穴

孤独死・孤立死の対策としてさまざまな機器やサービスが普及し始めていることを、検視の現場でも目の当たりにします。

こんな事案がありました。

夏を感じ始めた6月下旬、消防から警察に通報が入りました。「通報者は死者の息子。一人暮らしの70歳代母親の家に見守りセンサーを契約して設置していたが、12時間動きを感知しないとの緊急メールが届いたため、合鍵で居宅に入ったところ和室で倒れている母親を発見した。救急隊は硬直の発現を認めて病院不搬送」という内容です。

現場に行ってみると確かに人感センサーが設置されています。最近は離れて暮らす高齢の親を心配して、センサーやカメラによる見守りを導入する人が増えています。今回のケースでは12時間母親に動きがないとメールが来るシステムということなので、死後12時間程度が経過した遺体なのだろうと想像しつつ検視に当たりました。