京都にある漢方心療内科で、現役医師として働いている藤井英子さん。93歳の今も、心身に不調を抱える患者さんと向き合い続けています。ストレスや怒り、不満、落ち込みなど、心のモヤモヤを解き放つ極意を聞きました。(構成:野田敦子 撮影:福森クニヒロ)
栄養と適度な運動が心身を上向かせる
心身の健康のためには、生活習慣の改善が欠かせません。私は子育てのために仕事を離れていたころに、女子栄養大学の通信課程で栄養学を学びました。その経験を生かし、患者さんには漢方と栄養学の両方の視点から食事のアドバイスをしています。
診察室でまずお尋ねするのは、「朝ごはんを食べましたか?」「食事はどのようなものを、どんなふうにとっていますか?」という2つのこと。というのも、朝食を食べていない方が多いんです。食べていてもパンだけだったり、コーヒーだけだったり……。
体調不良で食欲がない、気分が落ち込んで準備ができないなど事情はさまざまですが、タンパク質や鉄分が不足すると心の不調が起きやすいもの。ですから患者さんには、少しずつでも1日3回規則正しく食べるようにして、必要な栄養をとってくださいねとお話ししています。
私自身は何でもいただきますが、せっせと食べているのは青魚でしょうか。イワシやアジ、サバなどに含まれるオメガ3系脂肪酸には、不安を減らしたり、認知機能の低下を抑えたりする効果があるとされています。高齢期の心と脳の健康を守ってくれる頼もしい食材ですから、積極的にとりたいですね。
煎茶もいいですよ。うま味成分のテアニンには、脳波のアルファ波を増加させてリラックスを促す効果や、うつ病のリスクを下げる作用があるという研究も。私は診療の休憩時間にお菓子と煎茶をいただくのを習慣にしています。