101歳の長寿を全うした生活評論家、吉沢久子さんが綴った、毎日の小さな喜びを大切に、前向きに悔いの残らない時間を過ごす生き方。エッセイ集『101歳。ひとり暮らしの心得』(中央公論新社)から幸せな暮らし方の秘訣を紹介します。

<自分で枠を作らない>

姑と暮らして知った人生の価値観

私には、「タンシチュー」と聞くと、真っ先に思い浮かべる女性がいます。20年の時間を共に暮らし、いろいろなことを教えてくれた女性、姑です。

粋に着物を着こなし、90歳を過ぎてもフォークとナイフを優雅に使ってボリュームたっぷりのタンシチューを食べきる姑の姿を、今でもはっきりと思い出すことができます。私はいつもそんな姑を誇らしく感じていました。外交官の娘として生まれ、外交官の妻として長い海外生活の経験を持つ姑は、洗練されていて生活を楽しむ知恵とセンスにあふれ、常に前向きでした。

 

(写真:stock.adobe.com)

 

そして、ゆるぎない自分の価値観と、それを貫くための強い意志を持った女性でした。そんな姑でしたから、世間で言われる嫁姑のイメージとは程遠い、人生の先輩と後輩、よき女友達として、共に暮らすことができたのだと思います。

姑は96歳で亡くなりましたが、素敵な人生の先輩の老いてからの生活を身近に見、共に過ごしたことが、私の現在の生活に大きな潤いを与えてくれているのは間違いありません。