病気の妻にから揚げが食べたいと言う夫、家事をやらない妻……夫も妻も、なぜ、みすみす関係を悪化させるような言動をとってしまうのでしょうか? 家族問題カウンセラーの山脇由貴子さんは、自ら設立したカウンセリングオフィスでさまざまな夫婦のカウンセリングを行ってきた経験から、「実はそこには、夫婦それぞれが育ってきた家庭環境が影響している」と語ります。今回は、山脇さんの著書『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。
子どもの頃に満たされなかった「愛情欲求」とは
人の心には、愛情によって満たされる器があります。
この器は、成長する過程で、親を中心とした周りの大人から愛情を注がれる事によって満たされていきます。十分に満たされないと心が苦しくなってしまうのですが、この器は心の深いところ、つまり潜在意識にあるので、なぜ満たされないと苦しさを感じてしまうのか、自分では理由が分かりません。
そこで、食欲や物欲、金銭欲、出世欲など別の欲求を満たすことで不足を補おうとしますが、この器には愛情しか入ってくれないので、他のものでは満たされない。つまり、苦しみは続いてしまうという構造です。
愛が注がれなかった、つまり「愛されなかった」と本人が感じてしまうのは、虐待はもちろんですが、放任主義で関心を向けられなかった、逆に過干渉で意思を尊重されなかったなどが原因といえます。