大学教授を定年前に退職した作家の三砂ちづるさん。竹富島に移住し、65歳にして初めての一人暮らしに挑んでいます。人口330人、娯楽施設はもちろん、買い物ができる店もない「不便」な島。ですが、年間25もの祭事・行事がある島での暮らしは、つねに神様とともにあり、島の人たちとの深い人間関係にも守られています。島での移住最初の1年を綴った著書『竹富島に移住して見つけた人生で大切なこと』より、一部を抜粋して紹介します。
好奇心とサービス精神
竹富島は人口330人弱の島に、年間50万人を超える観光客が押し寄せる。
町並み保存条例、準景観地区、などで規制されて守られてきた白い砂と赤瓦の町並みは、沖縄の原風景としてあまりによく知られている。
先日も、初めて竹富を訪れた方が、「竹富のことを写真で見たことがありますが、よく写真に撮られている白い砂と赤瓦の家に赤い花が咲いている……という道は、一本だけかと思っていましたが、島の集落が全部そのような景色で驚きました」と言っていた。
島の集落内はまさに、同じような赤瓦の伝統家屋に、白い砂の道が続いていて、表札はなく地番なども書いていないから、初めて来た方は、すぐ近くであっても道に迷う。どれも同じ家に見えるからである。
家はきれいに整えられ、家の前の道もよく掃除され、朝には箒目もつけられていて、集落全体はまことに美しい。
ブーゲンビリアやハイビスカスが、真っ青な空によく似合っている。真っ白い砂と海の色が映える遠浅のコンドイ浜は、観光客が多いとはいえ、そこは離島、大した混雑もなく、楽しむことができる。