世間には図々しい人がたくさんいる
夕方、スーパーで買い物をしていた。数人が並んでいるレジの最後尾に並び、順番を待った。しばらくして前の人がお会計を済ませ、ようやく次は自分の番だ! と進もうと思ったところに、ショートヘアで小柄なおばさんがグイッと割り込んできた。
「え?」
あっけに取られているうちに、おばさんは買い物かごを「よいしょっ」とレジカウンターに降ろしていた。しれっと割り込んでんじゃないよ! なんて図々しいんだ!
レジの店員さんからは死角になっていてその様子は見えていない。
「私が先だったんですけど!」と言う勇気もなく、大人しくそのおばさんの後にお会計するしかなかった。おばさんは悪びれる様子もなく、買ったものを自分のバッグに移していた。くそー! はらたつ!
世間には図々しい人がたくさんいる。
子どもの運動会でのこと。保護者の撮影スペースは「わが子が出番の保護者に最前列を譲る」のが通例なのに、関係なく最前列に居座り続けている人がいる。町内のゴミ当番やドブ掃除には一切参加しないのに、当たり前のようにゴミを出し、町内の夏祭りには来るような人もいる。仕事関係でも、デリカシーのない発言をする人や、空気を読まずに自分の要望を通す人などがいる。
そういう人たちを見ると心拍数が上がり、嫌な気分になり、帰宅後も悶々と考えては疲れてしまう。
「お子さんが終わったら変わってもらえませんか?」
「ゴミ当番、ちゃんと来てもらえませんか?」
「他の人のことも考えてもらえませんか?」
そんなこと言えたらいいのに……。いや、言えるわけない。意を決して言ったとしたら、何日も後悔してしまうし、その人を見かけるたび逃げ出してしまうだろう。
こちらはこんなにモヤモヤしているのに、当の本人たちはいつでもケロッとしている。ずるい。私だってゴミ当番なんてしたくないし、一番いい場所で子どもの写真を撮りたい!
彼らはルール違反をとがめられるどころか、得をしている。じゃあ、世の中デリカシーがない人の方が幸せじゃないか?
私の夫もそうだ。子どもたちが登場しないうちから最前列に陣取って「なんか言われたら退けばいいじゃん」とケロッとしている。非常識だ! でも、良い写真が撮れそうで頭の隅で「いい写真撮ってね」と思っている。
そうだ。私は図々しい人たちを「非常識だ」と怒るのと同時に、そんなことができて羨ましい、と思っているのだ。
この「他人にどう思われるかを気にしない」メンタルは、時として、社会的な成功をつかむための最強のカードにもなる。そのことをまざまざと見せつけられた出来事がある。
