給与水準の低さ──「感謝だけでは生活できない」とこぼす現場
介護職員の月収は、処遇改善加算が拡充された今でも全産業平均を大きく下回ります。
手取りが限られるなかで物価や家賃が上がれば、生活費を捻出するために残業や夜勤を増やさざるを得ません。「もう1回夜勤に入れば来月の家計が楽になる」と考えながらシフト表に名前を書き込む若手が珍しくないのは、その裏返しです。
給与と生活費のギャップは、まず健康管理に影を落とします。
疲労回復のために本来なら栄養バランスの整った食事が必要でも、財布事情が許さず、コンビニ食等でしのぐ人が少なくありません。睡眠不足と腰痛を抱えたまま夜勤に入り、翌日の明けで家賃を払うためにダブルワークへ向かう――そんな働き方が慢性化すれば、ミスや事故のリスクが高まります。
また、将来設計が描きにくいことも大きな問題です。結婚や出産を機に「家計を支え切れない」と介護職を離れるケースが後を絶ちません。
専門性を磨こうと資格取得に挑戦しても、学費や受験料を捻出する余裕がなく、研修参加のための交通費や有休取得に躊躇する人もいます。キャリアアップが「やりたいけれど、金銭的に厳しい」という理由で先送りされると、現場には経験の浅い職員が増え、ベテランとの負担格差がさらに広がります。
ギャップはチームの空気にも影響します。賃金が低いまま時間外労働に頼れば、「頑張っても報われない」という意識が募り、感謝の言葉やレクリエーションの笑いさえ空々しく感じられる日があります。
そうしたムードは利用者に伝わり、ケアの質を落とす要因となります。やりがいを語り合うはずの休憩室で、物価や光熱費の値上がりが愚痴の中心になると、ポジティブな循環を維持するのが難しくなります。
最前線で介護を担う人たち、「生活も未来もここで築ける」と実感できる環境を整えなければ、どれほど制度を改正しても現場の持続性は確保できません。
給与の数字をめぐる議論は、職員の暮らしやモチベーションにどう反映されるのか――その視点を持つことが、介護業界全体の底力を引き上げる鍵になります。