介護現場を持続可能にするには
こうした摩耗を防ぐには、まず仕組みとして「余白」をつくることが必要です。
日々のケア会議に感謝の時間を設ける施設では、陰口より先に称賛が飛び交うため、チームの心理的安全性が高いと報告されています。また、夜勤明け後に必ず15分のクールダウン面談を行い、感情を言語化するルールを設けたことで、突然の離職が激減した事例もあります。ICT活用で削った巡視や記録の数分を「対話の投資」に振り向けることが、人間関係の摩耗を防ぐ最もコスト効率の良い方法です。
それでも摩耗が起こったときは、第三者の介入が必要です。
外部ファシリテーターを招いたケースレビュー研修や、メンタルヘルス専門職によるグループリフレクションは、閉ざされた空気を一度リセットし、対話のルールを再構築する効果があります。ポイントは「問題の犯人捜し」を避け、「何が起きたら誰が困るか」を共有することです。目的を“人”ではなく“プロセス”に向けることで、責任の押しつけ合いを防ぎます。
人間関係の摩耗は、書類のミスや転倒事故と違い、数字に現れにくいゆえに見過ごされがちです。しかし、離職やサービス低下の背景には必ず心理的要因が潜んでいます。
介護現場を持続可能にするには、職員同士が安心してフィードバックし合い、感情を吐き出せる仕組みを日常に組み込むことが欠かせません。笑顔と感謝を支えるのは、技術ではなく人と人とのあたたかな関係なのです。
※本稿は、『未来をつくる介護』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
『未来をつくる介護』(著:森山穂貴/クロスメディア・パブリッシング)
本書ではアメリカのCCRC(生涯居住型コミュニティ)を参考に、日本の実情に合わせた独自モデルを提唱。
「課題先進国」から「解決先進国」へと転換する可能性を示します。




