著者の平野レミさん(撮影:本社・奥西義和)
“シェフ料理”ではなく、“シュフ料理”をモットーに、テレビや雑誌を通じて数々のアイデア料理を発信している料理愛好家の平野レミさん。著書『平野レミ大百花』では、祖父母のことから、両親や夫・和田誠さんとの出会い、料理にまつわる思い出まで人生をまるごと綴っています。ユニークな発想と料理を好きな気持ちがあふれているレミさんはテレビの料理番組出演でも話題を呼び――。

料理上手になるには

「四季の味」にエッセーを掲載した一九七七(昭和五十二)年以降に、私の家庭料理が注目され、雑誌に取り上げられることも増えます。有名シェフや料理人でもない、シュフの「安くて早くておいしい」料理が求められていたのでしょうね。

<「チン」と音が鳴る電子レンジが発売されたのは一九六七年。「チン」はレンジの代名詞になり、調理の時短を助ける家電が台所に普及する>

忙しい中でどうしたらもっと手早く、おいしく作れるかいろいろ試しました。実家の母の炒り豆腐は、水切りした豆腐と水で戻した干しシイタケを炒めますが、私は干しシイタケを戻さずに水切りしない豆腐にそのまま入れちゃう。シイタケに水分を吸わせてwin −winの炒り豆腐にしました。

私が新しい料理を作ると、和田さんが味見をしてくれる。食卓の端の方に置いていても、好奇心が強いから、すぐに見つけて一番に箸をつけて感想を言うのです。料理上手になるには、味見をしてくれる舌も大事よね。

当時のことで覚えているのが、ある雑誌の編集部と大げんかをしたこと。印刷前のゲラ刷りを確認していたら、完成した私の料理の写真の上に、どーんと大きく見出しの文字がかぶさっていた。せっかくの料理が台無しでした。

だから「文字をかぶせないでください」とお願いしたら「平野さんより、デザイナーの方が大事」と言われました。見栄えも含めて一生懸命考えた料理よりデザイン優先と言われたのが許せなかった。だから、「掲載を見合わせたい」とけんかして、デザインを変えてもらったのです。