病原体から体を守る乳酸菌とビフィズス菌
私たちの体に有益な“善玉菌”として知られる乳酸菌とビフィズス菌。その具体的な働きを、腸内細菌研究のスペシャリストである辨野義己先生に解説してもらいました。
「乳酸菌は糖を餌に『乳酸』を産み出す菌の総称で、現在、400種類以上が知られています。酸素の有無に関係なく生きられるため、酸素のある胃や小腸に加え、酸素のない大腸にも存在。一方、ビフィズス菌は糖を餌に『乳酸』と『酢酸(さくさん)』を産生する菌です。人の腸内では約10種が検出されており、酸素が苦手で大腸だけに存在しています。その数は、乳酸菌の約1000倍、腸内細菌全体の約5〜10%を占め、腸内環境に大きな影響を与えているのです」(辨野先生。以下同)
2つの菌が産み出す乳酸や酢酸は、腸内のpH(ピーエッチ)(酸・アルカリの度合)を酸性に傾け、有害な“悪玉菌”や病原体が繁殖しにくい環境を作るそう。
「胎児の腸は無菌ですが、出生時に産道を通る際、母親の菌を受け継ぎます。母乳やミルクを飲み始めると、乳糖を餌にビフィズス菌が増殖。腸内細菌の80%を占めるまでになり、病原体に弱い腸管をしっかりガードしてくれるのです」
離乳食が始まると腸内の菌は多様化し、3歳頃までに1000種類以上、100兆個が群生するように。なかでも乳酸菌とビフィズス菌は、病原体を撃退する免疫細胞を活性化させる、重要な役割も担っているのです。
「食べ物と一緒に病原体が侵入しやすい腸には、全身の約50%もの免疫細胞が存在しています。乳酸菌は、小腸の免疫細胞が集まる “基地”であるリンパ節(パイエル板)に取り込まれると、病原体を攻撃する『マクロファージ』や、病原体に感染した細胞とがん細胞を排斥する『NK(ナチュラルキラー)細胞』といった免疫細胞を活性化し、免疫力を増強。また、ビフィズス菌は、大腸の免疫細胞を刺激して、病原体やがん細胞を抑制する物質を産出させる作用があるのです」