(写真提供:Photo AC)
近年、日本の伝統文化や価値観にあらためて関心が集まっています。その根底に流れるのが「自然と共に生き、違いを受け入れ、調和を尊ぶ和の心」と話すのが、山陰地方で呉服店「和想館」を営む、和と着物の専門家・池田訓之さんです。分断や対立が目立つ現代社会において、この精神は私たちにどのような示唆を与えてくれるのでしょうか。日本文化が世界を惹きつける理由と共に、これからの生き方へのヒントを解説いただきました。

800年周期で訪れる文明の転換

私は大学時代には毎日京都駅を利用していました。その当時の京都駅は、通勤通学の人が行きかう中に外国人はまばらでしたが、昨今の京都駅は外国へ行ったような錯覚に陥るくらいに外国人で溢れています。

私が学生の頃の外国人の日本への旅行客数は233万人(1985年)、それが2024年には3687万人と当時の10倍以上になっているから、景色がこのように変わるわけですね。

今、まさに日本ブームが到来しています。

この日本ブームの到来を35年以上も前に予見されていた方がいらっしゃいました。それは私が30年前に着物の仕事に就いたときの話です。

私自身の歩みを記せば、司法試験に10年挑戦するも合格できず、人生をやり直そうと考えていた時、家業の着物屋を継いだ友人から「うち(着物屋)で働かないか?」と声をかけてもらいました。

それで着物の道へ進む意味を見つけようと本を読み漁っていたところ、京都大学の岸根卓郎教授が書かれた「文明論」(東洋経済新報社、1990年刊)という一冊に出会います。

その中で岸根教授は、「人類文明は、二極対立の宇宙法則によって東西文明の二極に分かれ、~ 時計仕掛のように正確に周期交代を繰り返し永続できる」(「文明論」増補版6頁)。その時計仕掛けのような周期が「800年」であり、「今回の新東洋文明の最初の担い手(発火先)は間違いなく日本であろう」(25頁)と説かれていたのでした。

私は、この文章に触れて、世界が注目する日本文明、その根底に流れているのが和の心、そして着物は和の心の結晶である、だから私は、着物を通じて和の心を世界へ発信するために、この仕事をやるんだ!と自分の使命を感じました。

そして10年後に独立起業し、20年後の2015年には、世界の日本ブームに応えようと、業界初の海外店舗「WASOUKAN LONDON」をオープンさせました。

日本ブーム、そこには漫画ブームもあると思いますが、伝統文化への注目もその一因だと思います。