MARUU=イラスト
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。阿川さんがMCをつとめる番組収録を見学しに弟一家がきたんだそうで――。
※本記事は『婦人公論』2025年12月号に掲載されたものです
※本記事は『婦人公論』2025年12月号に掲載されたものです
私がMCをつとめている『日曜マイチョイス』という番組に弟一家が見学にきた。弟の一人息子、つまり私の甥が、共演者であるずんの飯尾和樹さんの大ファンなのだそうだ。一度、スタジオでの収録風景を見てみたいというので、
「よしよし、プロデューサーにお願いしてあげましょう」
伯母である私はふんぞり返って許可を取ってあげた。
当日、弟夫婦が息子ともどもテレビ局にやってきて、出迎えてくださるスタッフたちに頭を下げながら、「お邪魔します。これ、どうぞ」と手土産を渡しているところへ飯尾さんが現れる。
「あ、わあ、わわわ」
弟一家はたちまち興奮状態になった。飯尾さんは一同を楽屋に招き入れ、甥が差し出す「まいにち、飯尾さん」なる日めくりカレンダーに挿絵も添えてサインをしてくださった。その間、甥は遠慮がちながら、けっこういろいろ質問をする。小声でどんどん話しかける。伯母は気が気ではない。「ほら、聞きたいことがあるならもっと大きな声で!」とか、「ちゃんとご挨拶はしたの?」とか、さりげなく注意をする。が、あんまり口出しをして過干渉と思われてもいけないと思い、ときどき黙って見守る。それでもひやひやする。もちろん甥が失礼なことをしでかしたわけではないのだけれど、なんとなく落ち着かない。この感覚はなんだろう。
