体内時計についてご存知ですか。「なんとなく知っている」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。明治大学農学部教授である中村孝博先生は「体内時計は、人間を含むすべての生物の根源に関わる重要な機能を持つ」と語ります。そこで今回は中村先生の著書『知って得する、体内時計のはなし』より一部を抜粋し、体内時計に関する知識をご紹介します。
夜の光との付き合い方
最も体内時計を動かすのは「夜の青い光」
私たちの体内時計は光によって調節されています。
では、どんな光がいちばん強く体内時計に作用するのでしょうか。結論から言うと、青色の光(ブルーライト)です。私たちの体内時計は、波長でいうと460~480ナノメートル付近の光に最も概日時計の感受性が高いことが分かっています。少し専門的になりますが、これは動物実験によって明らかにされてきました。
1980年代、タカハシ博士らはハムスターを用いて、さまざまな波長の光を当てる実験を行いました。その結果、500ナノメートル付近、つまり青から緑にかけての光が、体内時計を最も強く動かすことが示されました。当初は、この波長が網膜にある視細胞(暗いところで働く桿体細胞)の吸収波長と重なることから、「目で物を見るための細胞が体内時計も動かしているのではないか」と考えられていました。ところが、その後の研究で、視細胞を欠損したネズミでも体内時計の光反応が保たれていることが分かり、話は一変します。
2000年代に入り、パンダ博士らの研究によって、メラノプシンという光受容タンパク質を持つ特殊な網膜神経節細胞が、体内時計の光受容を担っていることが明らかになりました。この細胞は、網膜で受け取った光の情報を、脳の体内時計中枢である視交叉上核へ、直接送り届ける役割を担っています。そして、このメラノプシンが最もよく反応する光の波長が、460~480ナノメートル。光の色で言えば、まさに青色なのです。
光を浴びる時間によって体内時計の位相が前進したり、後退したりするのです。すなわちブルーライトを浴びる時間をうまく利用して体内時計を調整することができます。