見上愛さん、上坂樹里さん主演で放送中の連続テレビ小説『風、薫る』(総合、毎週月曜~土曜午前8時ほか)。田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社刊)を原案に、看護師という職業の確立に貢献した大関和と鈴木雅をモチーフにしたバディドラマだ。看護の黎明期を描いた今作では、医療現場のリアリティを追求する上で、医事考証の役割は大きい。担当するのは、杏林大学医学部の冨田泰彦特任教授だ。医療ドラマの名作『JIN-仁-』も担当した冨田さんだが、「明治の医療を描くのは難しい」と語る。(取材・文:婦人公論.jp編集部:油原聡子)
考証が難しい明治前半の医療
『風、薫る』の舞台は、近代医療・近代看護の黎明期にあたる明治時代。明治15年(1882年)から物語がスタート。第1週ではりんの住む那須の村にコレラが広がる様子が描かれた。その後りんは上京し、もう1人の主人公、直美とともに梅岡看護婦養成所の1期生としてナイチンゲール式の近代看護を学び卒業。第61回からは、帝都医科大付属病院で看護婦として正式に働くようになった。
冨田さんは、『らんまん』以降、多くの朝ドラで医事考証を務めてきた。「看護師の始まりがドラマで描かれたことは、私の記憶の中ではありません。私が監修させていただいた『虎に翼』は女性弁護士の始まりを描いた物語でしたが、同じく『はじめて物語』として価値があるのではないでしょうか」と冨田さん。
当時日本の医療は西洋諸国に比べて遅れていた。「明治維新の前は、蘭学と漢方学が入り混じったような医療でした。実は江戸時代には医師の免許制もありません。明治になり、医療人材を育成するための教育がまさに始まったばかりだったんです」と説明する。
明治の医療を調べるのは難しかった。冨田さんは「明治30年くらいまでは写真の資料があまり残されていませんので、挿絵や文章で確認する作業になりました。医事考証の仕事としては幕末が舞台の『JIN-仁-』と同じか、今後の展開によってはそれ以上に難しいかもしれません。明治は医療の過渡期なので、数年単位で変化していく。その差異を見つけ出すのが難しいんです」と苦労を明かす。