細菌学の発展とともに

実際の手術シーンは反響も大きかったという。

第33回では、りんの担当患者だった、園部(野添義弘)の足の手術が、第41回では和泉侯爵夫人・千佳子(仲間由紀恵)の乳がん手術が描かれた。いずれも、外科医の今井益男(古川雄大)たちは、スーツに革のエプロン姿。マスクも手袋もしていないで執刀する姿にSNSでは「雑菌が入るのでは?」と話題になった。

『風、薫る』場面写真
『風、薫る』/(c)NHK

冨田さんは「海外の医学論文を調べましたが1870年代ごろまで手袋をしているケースはゼロ。1900年でやっと28%です。100%手袋をするようになるのは第二次世界大戦後。つまり、昭和に近い時代まで海外ですら手袋はあまり普及していませんでした」と説明する。

園部と千佳子の手術シーンは明治21年(1888年)の設定のため、手袋をしていると不自然なのだ。

医学が急激に進歩した時代だけに、手術シーンは変化している。園部たちの手術の1年後、第61回で描かれた、明治22年(1889年)の手術シーンでは、今井たち医師は、割烹着のような白衣を着用して執刀。「医師の術衣の変化には、細菌学の進歩が関係しています」と指摘する。

『風、薫る』場面写真
『風、薫る』/(c)NHK

世界的に、1870年代後半から90年代にかけて細菌学が発展したのだ。「当時は細菌や病気の原因についての認識があいまいでした。細菌学の発展に合わせて、消毒や衛生環境も変化していきます」

医事考証ではセリフ回しについての助言も行う。たとえば、今井教授はメスを「メッサー」と呼ぶ。これは冨田さんの指摘によるもの。今井教授はドイツ留学経験があるという設定のため、ドイツ語の「メッサー」に変更したのだ。