仕事、家事、恋、子育てと、日常を駆け抜けていらっしゃるお嬢様方、おかえりなさいませ。今夜も、執事がとっておきの短歌をご用意いたしました。お疲れの心にひとさじの癒やしになりますよう、どうかごゆっくりお召し上がりください。さて、本日はどんなお嬢様からのお呼びでございましょう……

穏やかではいられない日

少しずつ自由になって月経のにおいに慣れてゆくわたしたち    上坂あゆ美

最近のお嬢様はなんだかいらいら、くよくよ。元気がなさそうです。休日お昼になってもベッドでお休みのお嬢様、ここは豪華なアフタヌーンティーといたしましょうか? それとも、サンドイッチとお紅茶を持ってはつらつピクニック? 元気を出してくださいませ! そんなにいらいらくよくよしていてもしょうがないですぞ。気分を入れ替えてさっぱり! フレッシュなお嬢様になっていただかなければ、まわりもさびしゅうございます。

おや、ベッドのシーツ越しに何やら声が……聞こえません、大きな声で言っていただかないと……、え? なんですと? 経理……。お嬢様は広報部ではございませんか。経理部と連携を取りたいのでございますか? 違うと怒られましても?! 設定? わたくしめはお嬢様の執事でございます! いえいえ、これは設定ではなくて、生まれながらに、ですが。えっへん。え……、違う……?! もっとはっきり仰っていただかなくては。え、何をお怒りなのです? 

あ!あああ……生理……月経……。ああああ、これは大変失礼しました……でもこれは健康上の気遣い、言いづらいことではないのですぞ。白湯を用意しますね。腹巻きとカイロは必要ですか? わたくしめこうした気遣いは得意でございます。昔の妻が……、いえ、私の話はやめましょう。妻の尊厳にも関わります。とりあえず、アフタヌーンティーもピクニックもなしで、今日は穏やかに静かに過ごしましょう。

そんなお嬢様に、上坂あゆ美さんのお歌のお振る舞いです。

力強い歌です。年月を重ねていくことで、私たちは若さを失う代わりに、経験により自由になっていきます。初潮が来た時のことを思い出してください。世界の何もかもがわからず、不安と可能性を抱いてその時を迎えたと思います。でも、今のお嬢様は不安があってもトラブルシュート。この社会の仕組みを知っていく経験、そして、可能性にもある程度の見積もりができるようになりました。それによって、お嬢様が精神的に自由になったことはたくさんあると思います。もちろん、時間的には忙しい。でも、心にとどめるべきことやとどめなくていいこと、やりたいことをやる自由、権利を主張する自由を手に入れ、お嬢様はあの頃よりずっと生き生きしておいでです。たとえシミひとつない肌を失ったとしても。
また、女性として自由を知ることは「月経のにおいに慣れる」、つまり痛みを知ることでもあります。毎月くる痛みとともに、この痛みを多くの女性が抱えているのを優しく想像すること。そう思うと、年月を重ねるということは、共感力と自由の両面を手に入れることかもしれません。