(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、認知症とMCIの有病率の合計値は約28%(2022年時点)だったそうです。日本において「認知症は恐ろしい病気である」という認識の一方、スウェーデンでは「認知症は新しい人生の始まり」と言われているようで――。そこで今回は、介護老人保健施設アートヒルズ医師・宮本礼子さん、スウェーデン王妃認定認知症専門看護師・長谷川佑子さん、群馬大学名誉教授・山口晴保さんによる著書『認知症でも私のことは私が決める-日本の不自由とスウェーデンの自由』より一部を抜粋し、認知症の医療と介護のあり方を御三方による鼎談形式でお届けします。

医療より介護、人生を楽しむスウェーデン人

宮本礼子:今回は介護施設での認知症介護について、日本とスウェーデンを比べてみたいと思います。長谷川佑子さん、そちらの高齢者の暮らしはどんな感じですか?

長谷川佑子:はい。ほとんどのスウェーデン人は、「高齢者がより良い生活を送るためには、医療よりも生活支援」と思っています。例えば、飲めるなら点滴よりコーヒーを、というぐあいに。

山口晴保:へぇー、「医療より生活」って言い切っちゃうんだ。

長谷川:はい。スウェーデンでは、そう思う人が多いです。高齢者自身も、治療を優先することで、それまでの暮らしが失われることを望みません。慣れない入院やつらい検査を受けるよりも、これまでの生活が続くことを望みます。

宮本:それはいいですね。でも、どうしてそんな考え方が当たり前になったのでしょう?

長谷川:それは、「最期まで自分らしく、豊かに生きたい」と、国民が強く願うからです。スウェーデンの人たちは、若い頃から仕事一筋ではなく、家庭や自分の時間を大切にします。人生を楽しむすべを知っているからこそ、高齢になっても、その生き方を守ろうとするのでしょうね。