宇野千代
(写真:『宇野千代 ちょっと自伝』より)
現在放送中の、2026年度後期連続テレビ小説『ブラッサム』。石橋静河さん演じる主人公・葉野珠のモデルは、作家・宇野千代さんです。小説家として数々のベストセラーを生み出したほか、着物デザイナー、実業家、モデルとしても幅広く活躍した宇野さん。今回は、宇野さんが88歳から91歳のときに語り下ろされた言葉をまとめた『宇野千代 ちょっと自伝』より一部を抜粋してお届けします。

大したものになりたかった

三浦環に憧れて、歌うたいになろうと思ったことはありますよ。岩国にいた時分から、声はわりあいよかったし、お義母さんは歌が上手くて評判のひとでしたからね。尤(もっと)も、そのときの歌っていうのは、「あたしゃお前にほうれん草」みたいな、日本の歌よ。

三浦環という人は、外国でオペラを歌ったんですから、大したものよ。

わたしは岩国で学校の先生になって、男前の先生に惚れて、それが因(もと)で辞める破目になったでしょう。好かれたい一心でデコデコにお化粧をして学校へ行ったり、授業中に生徒に恋文をその先生の所へ届けさせたりするんですもの、くびにもなるよ。

そうやって東京に出てきたんだから、なんとかして偉くなりたいと思ってねぇ。三浦環みたいに、大したものになりたかった。