4,000匹以上のぬいぐるみと暮らす小説家・新井素子さんの日常がここに。「ぬい活」が一般化するはるか以前、「ぬい」という呼称を生み出し、社会からずっと変人扱いされてきた新井さん。「ぬいぐるみは生きている」と本気で確信し育んだ「ぬい」たちとの生活には、ただごとではない発見と幸せのヒントが詰まっていました。

遠距離介護を支えた〝カピバラ店長〞

えーと、すみません。
前に書いたことの中で、補足しなきゃいけないことがありました。
それは、〝事情があって、何回も一緒に旅行をしているぬいさん〞のこと。
うちには、そういう子がいます。(何匹も。)


こういう子達は、ぬいさん本ぬいの〝楽しみ〞で旅行している訳ではなくて……私達の都合で、旅行をしているぬいさんなんです。(お仕事ぬいさんの一種です。)

一番典型的なのは、以前、TVのことを書いた時に出てきた、〝カピバラ店長〞。
この子は、うちに来た時には〝カピバラ店長〞っていう名前でした。ちょっと大きめのカピバラで、そもそも、売っている時の設定として、「カピバラショップの店長をしている」っていうものがあって、店長エプロンをしていて、左手にははたきを持っている。


そして……この子がうちに来てちょっとした頃、我が家では大事件が起こりました。大阪在住の旦那の父が、いきなり硬膜外血腫か何かで入院することになったんです。
私達夫婦はとにかく大阪に駆けつけ(何も考えずに、当時うちに来たばっかりのカピバラ店長をひっつかみ、一緒に大阪へ行ってもらって)……そして判った衝撃の事実。


ここしばらく、私達が大阪へ行った時、大阪の家ではなく、梅田の喫茶店なんかで両親と待ち合わせをして会っていたのは何故か、親を家まで送っていこうと思ってもなんかかんか理由をつけて避けられていたのは何故か、お義母さんがあんまりしゃべらなくなっていたのは何故か。(この頃から、お義母さんの様子が何か変だったので、旦那が、「地域包括支援センターの方に連絡して、おふくろの状態診てもらった方がいい」って話を、お義父さんに何度もやっていたんですが……お義父さんに微妙にはぐらかされていました。)


この時。実は、お義母さん、認知症になっており……大阪の家はごみ屋敷になっていたんですね……。(たまに会うだけの私達は、見事に誤魔化されておりました。……うん……何か変だ、何かおかしいって思ってはいたんですが……あんまり深入りできなくて。)とにかく、お義父さんが倒れたっていうんで、大阪の病院へ行った私達、お義父さんの病状が大変だっていうことを知ったのと同時に、お義母さんの方も大変だっていう衝撃の事実を知ったのでした。