プロと学生競技の違い
日本テレビの土曜ドラマ『俺たちの箱根駅伝』の第1回放送が終わった。箱根駅伝の中継を担うテレビ局と、大学陸上部を舞台にした人間ドラマだ。立ち上がりから、仕上がりの精度が高い。
主人公は大日テレビの徳重亮(大泉洋)。チーフプロデューサーとして、箱根駅伝中継の全責任を負っている。
もう1人のキーパーソンが甲斐真人(山下智久)。学生連合チームの監督として、箱根駅伝に出場する。
原作は、直木賞作家・池井戸潤氏の同名小説(文藝春秋)。やはり大泉が主演したTBS『ノーサイド・ゲーム』(2019年)の原作者でもある。この作品は企業内ラグビー部の苦悩と歓喜を描いた物語だった。
池井戸氏は、企業とスポーツを地続きに描く名手だ。今回の「テレビ局」と「駅伝」は一見、水と油だが、その本質は近い。どちらも個々の力が一つに結集することで、大きな収穫が得られる。
第1回を簡単に振り返りたい。まず登場したのが明誠学院大の陸上競技部である。名門だが、箱根駅伝から2年間遠ざかっている。
箱根駅伝に出場できるのは、前回大会で10位以内に入った大学と、予選会で上から10位以内に入った大学。計20大学である。関東学連のホームページによると、加盟校は2026年度で172校もあるから、箱根路を走るには熾烈な競争を勝ち抜かなければならない。
明誠学院大は予選会からのスタートだった。ベテラン監督・諸矢久繁(寺尾聰)は、選手たちに向かって「おまえたちなら絶対に出来る。箱根を掴み取れ」と励ます。諸矢自身からも自信が感じられた。
しかし、結果は11位で予選落ち。これで3年連続の敗退だ。諸矢の顔から表情が消えた。箱根駅伝は選手たちの夢であり、同時に大学の名声とOB・OGの期待がかかっているからだ。どの大学も同じである。諸矢は自らの責任を深く噛みしめた。
エースで4年生の主将・青葉隼斗(小林虎之介)は泣きじゃくった。「ごめん、みんな」。過去2年はケガによって予選会は不参加。今回の予選会では右腹痛に襲われてしまい、満足な走りができなかった。
だが、諸矢は青葉を責めない。全選手に向かって、「よくやった。本当によくやった」とねぎらう。そのあと、こう説いた。
「おまえたちは敗けた。でも、素晴らしい敗者がいるから勝者は輝くんだ。今のおまえたちは素晴らしい敗者だ。さぁ、あしたから輝く勝者を目指して走れ。胸を張って走るんだ。おまえたちは私の誇りだ。ありがとう」
これがプロスポーツと学生競技の違いである。大学駅伝は紛れもなく教育の一環だ。箱根駅伝が多くの人々を魅了する理由の1つが早くも示された。