良識派演じて光る大泉

一方、大日テレビの徳重は頭を悩ませていた。箱根駅伝の選手たちをリスペクトする彼は、その力走を演出抜きで中継したいと考えていたが、横やりが入ったのである。上司である編成局長・黒石武(高橋克典)が、箱根駅伝にバラエティー色を加えろと命じてきた。

黒石は上昇志向の塊のような男である。バラエティー色を出すことで箱根駅伝の視聴率を上げ、自らの手柄にしようと企んでいた。  

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徳重はこの話を断るつもりだった。ところが、黒石は徳重に断りなく、お笑い芸人・畑山一平(生瀬勝久)に出演を依頼してしまう。畑山は、「芸能界の総元締め」と呼ばれる田村健一郎(小日向文世)のタムケンプロに所属している。

徳重は憤り、動揺する。「冗談じゃないですよ!」。黒石が自分の頭越しに畑山の出演を依頼したからではない。田村が芸能界の権力者であり、逆らえないからだ。依頼を白紙に戻せば、ひと悶着起きるのは間違いない。

テレビ局にとって、芸能界の実力者は絶対的な存在だ。逆鱗に触れれば、事務所の所属タレントの出演を止められてしまう。ほかのドラマではほとんど描かれないが、この物語はその実態を浮き彫りにした。

徳重役の大泉は、組織内の良識派を演じたらピカイチだ。表現力が豊かであることに加え、やさしげな顔立ちだからだろう。対する高橋も、組織内の憎まれ役がよく似合う。雰囲気にどこか品格があり、視聴者側に決定的な不快感を抱かせないために違いない。

組織内の善良な男も憎まれ役も、演じきるのは簡単ではない。刑事ドラマなどとは異なり、現実の組織には極端な善人も悪人も存在しないからだ。