(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
笑える科学『イグノーベル賞』をご存知でしょうか。人々を笑わせ、そして考えさせる研究に贈られる賞であり、そのユニークな研究内容から、毎年の授賞式は科学に馴染みのない人からも注目を集めています。サイエンスライターである五十嵐杏南さんは、「科学者たちは、自らを実験台にしたり、何十年も同じテーマを追い続けたりしながら、素朴な疑問に本気で挑みます」と語ります。そこで今回は五十嵐さんの著書『ヘンな科学:“イグノーベル賞”研究42講』より一部を抜粋し、「科学の面白さと奥深さ」をお届けします。

研究のためならハチにも刺される――自らを実験台に徹底比較

研究のためなら、どんな苦しみも乗り越えられる……と、身体的な苦しみを自らに課してまで、ストイックに研究課題を追究する研究者もいるのだ。

2015年の生理学・昆虫学賞は、そんな2人の研究者に贈られた。

1人は、自ら様々な種類の昆虫に刺されながら、虫刺されによる痛みの指標を開発したジャスティン・シュミット研究員(当時アメリカ農務省の研究機関所属)。もう1人は、ミツバチに自身の体のあらゆる部分を刺させ、刺される箇所ごとの痛みの度合いを評価したマイケル・スミスさん(当時コーネル大学大学院生)だ。

様々な虫刺されによる痛みの指標を作った昆虫学者のシュミット研究員。世界各地で標本採集をしていると、虫に刺されてしまうことがよくある。その苦しみが、少しでも世のため人のためになれば、と記録した結果できたのが、虫刺されによる痛みを比較した「シュミット刺突疼痛指数」だ。

この中で、痛みは0から4の5段階で評価されている。目安としては、0が「人間にとっては屁でもない痛み」、2が「一般的なハチ刺されくらいの痛み」、4が「最も痛い」だ。

1983年に取り組み始めてから改良を続け、2016年には虫刺されの記録に関する本も出版した。

最終的にシュミット研究員は83種類の虫刺されを分類している。