笑える科学『イグノーベル賞』をご存知でしょうか。人々を笑わせ、そして考えさせる研究に贈られる賞であり、そのユニークな研究内容から、毎年の授賞式は科学に馴染みのない人からも注目を集めています。サイエンスライターである五十嵐杏南さんは、「科学者たちは、自らを実験台にしたり、何十年も同じテーマを追い続けたりしながら、素朴な疑問に本気で挑みます」と語ります。そこで今回は五十嵐さんの著書『ヘンな科学:“イグノーベル賞”研究42講』より一部を抜粋し、「科学の面白さと奥深さ」をお届けします。
タマネギを切ると目にしみる理由が意外と複雑だった――「涙が出ないタマネギ」開発のもとになった研究
夕飯の準備の手伝いでタマネギのみじん切りを頼まれ、目にしみてめげてしまう。多くの子どもが経験することだろう。
タマネギを切ると涙が止まらなくなることは、小学生でも幼稚園児でも知っていることだが、意外にもなぜそのようなことが起こるかは2000年代初頭まで解明されていなかった。
というか、学術界は知ったつもりでいたが、当初思われていたほどシンプルな話ではないことが分かったのだ。謎を解明したのは、今井真介博士をはじめとするハウス食品の研究グループ。この発見を称えて2013年の化学賞が贈られた。
発見を一文でまとめてみよう。タマネギを切る時に飛び出る成分が、一つの酵素に反応して催涙成分に変わると思われていたところ、実はもう一つの隠れた酵素の働きも重要で、二つの酵素反応を経ないと目にしみない、ということだ。