「あまり無理せず自分のペースで働いて、必要なぶんだけ収入を得るというのは、リタイア世代ならではの働き方でしょうね」(撮影:山田真理)
70歳の時に東京から栃木県のサービス付き高齢者向け住宅「ゆいま〜る那須」に移住した久田さん。自分のペースで仕事を続けながら、新しい活動も始めているようです(構成=山田真理 撮影=本社写真部)

時間をすべて自分のためだけに使える

朝起きて、今日やることを手帳に書き出したら近くの牧場などを散歩。戻って朝食を済ませたら、おもむろに仕事を始めます。これまで何十年も家族のために家事や育児、介護、孫の世話をしてきた時間をすべて自分のためだけに使えるのは本当に快適ですね。

物書きというのは元祖リモートワークのようなものだから、2年前に移住してからも、新聞の連載エッセイや本を書くための取材などは続けています。フリーの私がもらえるのはわずかな国民年金だけですし、シングルマザーで息子を育ててきたので蓄えもそんなにはありません。ここで暮らす費用は移住前の計算で「まあ何とかなるかな」と思っていますが、この先のことはわからないし、元気なうちは当然のように働かなくちゃあと考えています。

周囲にもリタイア年齢を過ぎて働く人が大勢いますよ。ゆいま~るの入居者仲間でいえば、近くに働きに行く人や、コロナの影響で移動が難しくなるまで週1回、新幹線で東京の保育園まで通っていた保育士の人がいます。トールペイントの上手な入居者仲間は先日、近所の牧場からヨーグルトのパッケージデザインや、新しいお店の看板を描くのを頼まれていました。