(撮影=大河内禎)
気晴らしになり、健康になり、万が一何かくことがあり、一体それ以上何を望むというのだ。何も特別なことは期待せず、へらへらと家を出発するのだ──女優・小林聡美さんが考える、散歩の極意とは(撮影=大河内禎)

暑くもなく、寒くもなく、風のそよぎも申し分ない

散歩を楽しむには、コツがある。

それは散歩に何も期待しないことだ。外を歩けば何か素敵な出来事や出合いが待っているのでは、とかそういう「欲」を携えて出かけてはいけない。何も期待しない散歩は、文字どおり歩くことだけが目的。歩いて家に帰ってくるだけで、その目的はめでたく達成される。

ただ、散歩に何も期待しない、といっても、修行僧のように黙々と脇目もふらずひたすら歩け、というのではない。行き先は決めてもいい。ついでに買い物してもいい。むしろ買い物してしまうかもしれないから、マイバッグは持っていたほうがいい。

備えあれば憂いなし。何も期待せずに出かけた先で、「あ! これ切らしてた」と思い出すかもしれない。昔から、偉い学者さんや作家、芸術家たちは、散歩することでさまざまなものが閃いたというから、私たちもそのくらいの閃きは大いにあるかもしれない。

だが、それも期待してはいけない。ものの本には散歩の本意は、気晴らしや健康のため、とある。気晴らしになり、健康になり、万が一何か閃くことがあり、一体それ以上何を望むというのだ。何も特別なことは期待せず、へらへらと家を出発するのだ。