クールな二枚目からコミカルな役までこなし、多くのファンを持つ俳優・田村正和さんが、4月3日、77歳で亡くなった。訃報が流れたのは5月半ば。その後、取材を受けて来なかった弟の田村亮さんが、本日発売の『婦人公論』7月13日号で独占インタビューに応えている。本誌だけに語った、俳優一家に育った日々と、正和さんの素顔とは(構成=篠藤ゆり 撮影=宮崎貢司)
訃報を受けて呆然となった
正和兄貴が亡くなって2ヵ月ちょっとたちましたが、いまだに実感がありません。「あれをしておけばよかった」といった後悔もないし、いまは、家族が一人いなくなったと静かに受けとめています。
訃報は、亡くなって2時間後くらいに受けました。夫婦で夕食を食べていたら、兄の妻・和枝さんからうちの妻に電話があって……。
妻から「おにいさまが亡くなった」と言われても、一瞬なんのことか理解できず、思わず「誰のおにいさん?」と聞き返しました。妻が3ヵ月ほど前に和枝さんと話したときも、兄は元気で毎日散歩していると聞いていたし――。電話を受け、しばらく呆然としていました。
最後に話したのは、3年くらい前かな。大人の男兄弟の距離感は、そんなものではないでしょうか。そのときは、兄が雑誌の記者に「もう、役者は十分やった」と、引退宣言とも取れるような発言をした頃。心臓の病気も抱えていたので、心配になって「どう? 体調は」と聞いたら、「仕事を休んでいるから、すごく調子がいいんだ」と言っていました。