暑さで寝苦しい季節でも、ぐっすり眠って体を癒やすことはできるのでしょうか。睡眠を上手にとることが難しくなってきた中高年が気をつけたいポイントを、医学博士の遠藤拓郎先生に教えてもらいました(構成=村瀬素子 イラスト=花くまゆうさく)

睡眠で大切なのは長さよりも深さ

「若い頃は8時間眠り続けることができたのに、今は長く眠れない」「なかなか寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」といった睡眠の悩みを抱える方は多いでしょう。そこに夏の暑さと高い湿度が加わると、さらに睡眠の質が悪くなり、疲れがとれなくなるように。

睡眠を正しくとれていれば、夏に感じやすい体のだるさは、その日のうちに解消できるもの。睡眠は単に休息の時間ではなく、体と脳のメンテナンスを行う時間だからです。簡単に言うと、古くなった細胞を新しく生まれ変わらせたり、傷ついた組織を修復したりしている、ということ。質のよい睡眠によって内臓は活発に働き、免疫力もアップ。就寝中は自律神経の副交感神経が優位になり、血圧や血糖値が下がるため、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防にもつながります。

では、質のよい睡眠とは何か。中高年の人にとって特に大切なのは、長さよりも深く眠ること。主に体のメンテナンスに関わる成長ホルモンは、深い睡眠のときに分泌されるものだからです。

睡眠には、浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠の2種類があり、約90分のサイクルで繰り返されています(図参照)。特に最初と2番目のサイクルのときに成長ホルモンが大量に出るため、寝始めの3時間に熟睡することが重要なのです。ただノンレム睡眠には深さに段階があり、歳をとるほどに深い段階の眠りを得られにくくなってしまいます。