7月に最終回を迎えた、翻訳家・村井理子さんの人気連載「更年期障害だと思ってたら重病だった話」。47歳の時に心臓に起きた異変。入院後、苦しい経食道心エコー検査やカテーテル検査を乗り越え、判明した病名は「僧帽弁閉鎖不全症」だった――。思い通りにいかないからだ、揺れ動く心理状態を丹念に追った体験談は、心に迫るものでした。9月に大幅加筆して、『更年期障害だと思ってたら重病だった話』として刊行。現在の村井さんの体調はどうなのだろうか?「連載アンコール編」として、村井さんに寄稿してもらった
検診に大学病院を訪れた
2018年3月に手術を受けてから、3年半の月日が経った。あっという間でもあり、長い道のりだったようにも思える。「術後3年でほとんど普通の人です」という執刀医の預言のような言葉通り、私は今、大きな手術を受けたことが嘘のように、とても元気に暮らしている。
私の疾患(僧帽弁閉鎖不全症)を見つけてくれた主治医のもとはすでに卒業し、今は地元の病院に3ヶ月に一度、通っている。新しい主治医は男性で、タイピングの速さが私を上回る。自分より速い人に初めて出会った。明るくて、説明が簡潔な、素晴らしい先生だ。
手術を受けた大学病院には、年に一度、精密検査を受けに行くことになっている。これは私が生きている限り、ずっと続くし、続けるつもりだ。
半年ほど前、2年目の検診に大学病院を訪れた。問診は5分とかからなかった。
「順調ですね。このまま行きましょう!」
そんな力強い言葉をいただき、うれしくなった。家事と育児に翻弄された私の人生にもうれしいことは多々あれど、まったく異常がなく心臓が動いているという事実は、私にとって何よりもうれしいことだ。胸部レントゲン、血液検査、心エコー、心電図、すべて問題なし。自分としては満点に近い。清々しい気持ちで大学病院を後にすることができた。入院時は歩くのがやっとだったエントランスを、スタスタと早足で進むせっかちな私が、以前は重篤な心臓病を患っていたなんて、誰が想像するだろう。それほど私は元気だ。