今年、東京・中央区にオープンして話題となった「分身ロボットカフェ」。ロボットを操作するのは、難病患者や障害などの理由で外出が困難な人たちだという。そこで働くスタッフと、ロボットの研究・開発者である吉藤健太朗(よしふじ・けんたろう)さんに話を聞いた(取材・文=古川美穂 撮影=本社写真部)
<中編よりつづく>
「ありがとう」「ごめんね」と言い続けて生きること
もうひとつ吉藤さんの復活を促した存在がある。全身が徐々に動かせなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんたちだ。
「オリヒメの開発過程では、たくさんのALS患者さんから力を借りています。ある時その中のお一人が『家族に迷惑をかけたくないので、人工呼吸器はつけない』と言うのを聞き、ショックを受けました。人は自身の尊厳のために死を選ぶこともある。
気持ちはわかるんです。『ありがとう』『ごめんね』だけ言い続けて生きるのはつらい。誰でも人に何かしてもらったら、何かを返せる自分でいたいのです。それができる選択肢を作りたいと強く思いました」と吉藤さん。