※本記事は『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』(佐々木政一、中央新書ラクレ)の解説を再構成しています
温泉って、何だろう?
世の中、まさに温泉ブームである。しかし、「温泉が好きだ」「温泉は気持ちいい」という人は多いものの、温泉を正しく理解している人は少ないように思う。そこで、まずは温泉についての基本的な解説から始める。
1 温泉の定義
温泉とは一体何だろうか。水道水や井戸水とはどこが違うのだろうか。日本では昭和23年(1948)に制定された「温泉法」で次のように定義されている。
(1)地中から湧出する温水、鉱水、水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)であること。
(2)源泉温度が25℃以上であること。あるいは指定された18種類(表1)の溶存物質のうち一つ、またはこれらの総量が1000mg/kg以上であること。
これらから判断するに、温度と成分はどちらか一つでも条件を満たせば温泉と呼べるわけで、冷たい湧き水でも、二酸化炭素(炭酸ガス)や鉄、硫黄、炭酸水素ナトリウム(重曹)などの指定成分を基準以上に含んでいれば温泉であり、また成分はほとんどなく真水に近くても、地中から出てきた時の温度が25℃以上であれば温泉と言えるのである。
2 療養泉とは
療養泉とは表1の規定を満たすもので、療養泉であれば温泉分析書に浴用や飲用の適応症を記載することができる。したがって、中には温泉であっても療養泉でないものもあり、これらは「温泉法による温泉」と呼ばれる。
3 温泉の由来
それでは温泉はどのようにしてできるのだろうか。地中深くの原始海水等が初めて地上に出てくるという「処女水説」と、雨や雪が地中深く染み込んで、50〜100年以上の年月をかけてマグマの熱や地熱によって温められ、途中でいろいろな物質を溶かしながら地表に出てくる「循環水説」とがある。現在では循環水説がほぼ定説になっている。