「ISR e-Sports」で「ぷよぷよ」をプレイする竹田さん(写真提供◎ISR e-Sports)
2021年の厚生労働省の発表では、日本人の平均寿命は、女性87.74歳、男性81.64歳と男女ともに過去最長に。年を重ねた後の時間が増える中で、そんなシニアだからこそ対象になる優待サービスがあります。高齢者に特化した遊びのスポットや仕事の依頼も。上手に活用して楽しんでいる人たちを取材しました。

<前編よりつづく

今シニアも熱中するeスポーツ

ちょっと変わった「シニア枠」もある。兵庫県神戸市にある「ISR e-Sports」は全国初のシニア専用eスポーツ施設だ。会員資格は60歳以上から。

eスポーツとはなんぞや? と思う読者も多いだろうか。eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉えた名称だ。若者を中心に競技人口は増えており、オリンピック種目に加えようという動きもあるとか。聞くだに、シニアとは縁がなさそうだが……。施設を立ち上げた梨本浩士さんも、「よく『どんな器具を使うジムなんですか?』と聞かれます」と笑う。

「鍛えるのは身体ではなく脳ですね。ゲームをすることによって、次の展開を読む推測力や、すべきことを瞬時に決める判断力、マウスを素早く操作する瞬発力などが鍛えられます。60歳以上限定にしたのは、シニアが集まりやすい環境が必要と考えたからです」と梨本さん。「ISR e-Sports」では6台のゲーム用パソコンを用意。1日3部制で、1部2時間。ゲームをプレイする時間90分と、30分のクールダウンタイムがつく。利用料はシニアも覚えやすく払いやすい1000円に設定している。

2年前にオープンしてすぐに会員になった初期メンバーの竹田ゆり子さん(70歳)から話を聞いた。竹田さんが通い始めたきっかけは、コロナ禍で楽しみにしていた海外旅行が中止になったことだそうだ。

「行き先はヨルダン。飛行機のチケットも用意していました。シングルマザーとして子どもたちを育て上げ、長年続けてきた仕事を退職して、さあ行くわよ、と意気込んでいたので、ガッカリしてしまって。そうしたら娘が『家の近くにこんなところがあるよ』と教えてくれたんです。eスポーツのことはニュースなどで知ってはいました」