〈6月15日発売の『婦人公論』7月号から記事を先出し!〉
「雨が降ると古傷が痛む」などと言うように、昔から天気の変化による体の不調を感じる人は多くいました。「天気痛」の研究・診療の第一人者である佐藤純先生に、天気が体に及ぼす影響と対策を聞きます(構成=島田ゆかり イラスト=関口ユートピア)

天気の影響は女性のほうが受けやすい

私は慢性疼痛(とうつう)の専門医として、原因不明の不調や痛みを抱える患者さんを1万人以上診察してきました。そのなかで、天気の変化によって体や心の不調を訴える人が多いことに気づいたのです。それがちょうど30年前のこと。当時の日本では、「雨が降ると古傷が痛む」などの言葉を耳にすることはあっても、その因果関係は証明されていませんでした。しかし研究を重ねた結果、天気の変化が自律神経を乱れさせ、不調を誘発する原因になっていることがわかったのです。

天気の変化によって表れる主な症状は、倦怠感、目まい、気分の落ち込み、食欲不振、むくみ、首や肩のこり、頭痛、関節痛など。その人の体の弱い部分に表出するのが特徴です。私はそれらの症状の総称を「気象病」、頭痛や関節痛など痛みを伴うものを「天気痛」と名付けました。現在日本では、1000万人以上の人が天気の影響を受けていると言われ、男性より女性のほうが特に多い印象です。

気象病は、天気の変化による不快さを脳がストレスとして認識することで自律神経が乱れ、体を興奮させる交感神経が過剰に反応して起こります。ですから、もともと加齢やホルモンバランスによって自律神経が乱れやすい女性は、男性よりも天気の影響を受けやすいと言えるのです。

具体的には、「気圧」「気温」「湿度」の3つの要素が、私たちの体に不調をもたらす引き金に。どれから最も影響を受けるかは人によって違うものの、気圧が変われば気温も変わり、気温が変われば湿度も変わるなど3つの要素は連動しているため、きっぱりと分けることはできません。ですから湿度が高く、気圧や気温の変動が激しい梅雨の時期は、気象病の一番の難敵と言えるのです。ほかにも、寒暖差が大きくなる季節の変わり目や気圧の変動が激しい春先、台風が多い秋口なども気象病の症状が出やすい傾向にあります。

まずは下記の「気象病チェックリスト」で、そもそも自分が天気の影響を受けやすいタイプか、また、影響を受けているならば、天気のどの要素から影響を受けるタイプなのかを調べてみましょう。不調の原因がわかれば、症状が出る前に予防したり、症状を緩和する対策を講じたりすることができます。