10代の頃、アイドル歌手としてステージに立っていた中江有里さん。だが、約2年間の活動の後、歌の世界から離れ、女優や作家の仕事を極めていった。その中江さんが、2019年から音楽活動を再開。歌手としてライブを行い、新曲も発表。2022年5月25日には歌手復帰後初のオリジナルアルバム『Impression -アンプレッシオン-』がリリースされた。25年以上の沈黙を破り、中江さんが歌の世界に戻ってきたのは、10代の頃に歌詞を提供してくれた作詞家・松井五郎さんとの思わぬ再会があったからだという。お2人の不思議な縁、そして、ともにつくりあげてきた音楽について伺った。(構成◎内山靖子 撮影◎初沢亜利)
25年ぶりの《再会》が、再び歌に向き合うきっかけに
中江有里さん(以下・中江) 松井さんにプロデュースしていただいて、今回、29年ぶりにオリジナルのニューアルバムをリリースすることができました。作詞も全曲、松井さんにお願いして。歌手活動をしていた10代のときも、松井さんに歌詞を書いていただいたので、不思議なご縁を感じています。
松井五郎さん(以下・松井) そう、90年代に、中江さんのシングルを4曲書かせてもらいました。最初に書いたのは「真夏の楽園」。ただスケジュールの都合などで、すべての方のレコーディングに立ち会うわけにもいかず、実際にお目にかかる機会がなかったんですね。
中江 しかも、私は2年ほどで歌を中断してしまい、自分の中では「終わったもの」として、歌の世界からはどんどん遠ざかっていく一方で。でも、40代になったとき、昔の自分をなかったことにするのはどうなのかと、当時を振り返った時期があったんです。とはいえ、今の自分はまったく違う世界で生きているので、近づきようがない……。そんなとき、松井さんが同じ作詞家の売野雅勇さんと一緒にトークショーを行われることをたまたま知って、観客として、お話を聞きに行こう、と。それで、せっかく来たのだから、ご挨拶だけはしようと思い、著書を買って、サインの列に並んだんですよ。
松井 あのときは、ビックリしました。サイン用に「お名前は?」って聞いたら、「中江有里です」って言うんだもの。(笑)