過疎の集落唯一の商店を毎日開く店主 尾上せき子さん(99歳)(写真提供:すばる舎)

総務省の調べ(2022年)によると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合は29.1%と過去最高。日本の高齢化はますます進んでいます。

静岡県浜松市の山間部にある、人口3500人ほどの町、春野町。子どもの声はほとんど聞こえず、過疎高齢化がすすむ町ではあるものの、出会うお年寄りたちはみんなとても元気。なぜでしょう?――そこに住む尾上せき子さんは、99歳の今でも、集落で唯一の商店を毎日開きます。

ひとりで仕入れから接客、販売すべてこなす

「休みはいつかって? わしがいるときには、いつも店を開けてるわ。休みなんてものは年中ないんだよ。わはは」

そう笑うのは、尾上せき子さん。1922年生まれ、99歳。今年の11月で100歳になる。

春野町の長蔵寺という集落にある、小さな商店の店主だ。自宅兼店舗で店を開いている。店では食品、お惣菜、日常品、花の種、日常生活雑貨、生活に便利なものをいろいろ売っている。

「店を開いてから、どれくらいになるのですか」

「27歳で嫁いできて店を始めたんだよ。だからもう70年余りになるね」

70年余りも、店を経営し続け、今も現役の第一線にいるというのは、なんともすごい。

著しい過疎化のため、集落にはもう店がない。ほとんどの店のシャッターは閉まったままだ。

なので、せき子さんが経営する店は、集落で唯一の小売店なのだ。

地域のコンビニ的な存在であり、せき子さんがこの店にいることが、地域の人の安心、安らぎにもなっている。

1日に来るお客さんは、5~6人ほどだ。住民のほとんどがお年寄りなので、歩くのもやっとの思いでせき子さんの店にたどり着く。

店でホッと息をついて、椅子に腰掛ける。そして商品を選ぶ。

「元気かね」「元気だよ」と挨拶を交わす。