せき子さんは、仕入れから接客、販売まで、すべてひとりでやっている。
注文もファックスに書いて仕入れ業者に送る。すると、業者の人がやってきて商品を補充してくれる。
店内はなんとも昭和の味わいある、懐かしい雰囲気。
入り口の冷蔵庫には、冷凍餃子。野菜の種。食パン、菓子パン。漬物。砂糖に醤油。ラーメンにそば。調味料。金山寺味噌やたくあん漬けなどのお惣菜。
奥の冷蔵庫には、飲料水、豆腐に厚揚げ。この厚揚げがとってもおいしくて評判だ。私はいつも、餃子と厚揚げを買って帰る。
客が商品を買うと、レジで金額を打ち込む。お釣りもさっと出てくる。暗算が得意だ。
「その油揚げよりも、こっちのほうがおいしいよ。はい、油揚げ2袋とパンね、1350円。千円札かね。じゃ、お釣りは650円」
しゃきしゃきしている。
ある日、私が買い物をしたとき、細かいお釣りがない。「またの機会でいいよ」ということになった。
1週間後に訪ねると、私の顔を見るなり、せき子さんのほうから「これね」とそのときのレシートを出してきた。記憶力は、とてもしっかりしている。