「100歳になっても店に立つよ」

せき子さんは毎日、仏壇に向かって拝んでいる。

「おふくろ、何を拝んでいるんだい?」

勝廣さんが聞くと、

「商売繁盛だよ」

と、せき子さん。

「その年になって商売繁盛もないだろう。普通なら、息子や孫の健康とか、そういうことを拝むんじゃないの」

そんなやりとりがあったらしい。

商売が繁盛するというのは、人の役に立つこと。人が来てくれること。人が元気になってくれること。人の役に立つこと。

 

仕事、自分の店が生きがいのせき子さん。

「もう今年で100歳になるんだ。100を超えても店は続けるよ。ほかにやることもないしね」

生涯現役の方である。

 

※本稿は、『過疎の山里にいる普通なのに普通じゃないすごい90代』(著:池谷啓/すばる舎)の一部を再編集したものです。


過疎の山里にいる普通なのに普通じゃないすごい90代』(著:池谷啓/すばる舎)

過疎化が進む山里。しかしここには、鉄人のような90代の元気な高齢者がたくさんいた──。88年、1日もか欠かさず日記を書く。和紙作り、鍛冶など職人技を守り続ける。99歳で毎日、自身の商店に立ち、仕入れから販売まですべて一人でこなす。軽々とチェーンソーを操り、木を伐る……。登場するのは、一見ごく普通のおじいさま・おばあさま。けれども、普通ではないお元気さ。その健康長寿の秘訣は何なのか?各人各様の人生を紐解きながら迫っていく。「人生100年時代」の希望の書。