人間とメガネの愛し合った記録
13世紀のメガネの誕生から最先端のメガネまでを、フルカラーの絵画や写真とともに楽しめる豪華な一冊。
メガネ、自分には関係ないわ、興味ないよ、という方もいると思いますが、実はこの本はメガネを通してみる人間の歴史でもあるところが面白い。古くは装飾品として、持ち主の権勢を誇るアイテムであったところから、嘲笑の対象になっていた時代、そしてカッコいいおしゃれアイテムになった時代など、時代ごとにメガネの受容のされ方がちがうということに、本書を読んで気づいた。
びっくりしたのは、一時期レズビアンを表すアイテムであったことや、ヒーロー・ヒロインを象徴するアイテムとなった時期もあったこと。そしてデザインによってメガネのもつ社会的「意味」がちがうことにも衝撃を受けた。
たしかに考えてみれば、いまやコンタクトレンズもあるなかで、フチなし、べっ甲調、サングラスなどメガネは多様化していて、見る側が受ける印象もだいぶちがう。単に「ファッション」に過ぎないと考えることもできる半面、その人の属性や性格を表すアイテムであると考えることもできる。アニメなどの二次元世界では、鼻にかけるか、しっかりかけるかのちがいだけでキャラクターの性格を表す重要アイテムにもなっている。
しかし本書で試みられているのは、そうした同時代的な分類ではなく、過去から現在までの人間とメガネの愛し合った記録であった。もっぱら男性用のアイテムだった時代もあれば、女性用ファッションアイテムとして手持ち式が流行した時代もあった。
視力という大事な感覚を守るためのものから、自己表現まで。絵画史、ファッション史としても楽しめる切り口で最後までワクワクして読むことができる。
知らなかったことばかりの、一筋縄ではいかないメガネの歴史におののいた。