写真提供◎AC
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第41回は「お金のことばかり考える」です。

奨学金返済を苦に自殺する人がいる

先日、「2022年の自殺者のうち、理由の一つとして奨学金の返還を苦にしたと考えられる人が10人いた」というニュースが飛び込んできた。
「自殺者の統計が同年から見直され、原因や動機に奨学金返還の項目が加わったことで初めて明らかになった」のだという。
自殺の動機「奨学金の返済苦」、22年は10人 統計見直しで判明 朝日新聞デジタルより 

しかし、現場の支援者らはこの数字は氷山の一角ではないかと指摘する。奨学金返済を苦に自殺する人がいる。衝撃的な話ではあるが、現行の制度では、正直そうなるのも無理がないとも思う。かねてから日本の奨学金制度はその厳しさが指摘されている。実質的に救済制度がなく、返済を免れるには死ぬしかない、とまで言われている。

実際、減額返還や返還期限猶予の制度はあれど、経済的理由で返還が困難などの事情があるかつ、申請して通った場合に、期間限定で適応されるが、申請できる上限回数は決まっている。上限回数を超えれば支払いは絶対。また、支払う総額は変わらないため、減額返還や返還期限猶予をしたらその分完済までの期間が長くなるだけなのだ。

返せないなら借りるなと言われたりもするが、奨学金を借りるかを決めるのは18歳の高校生。将来完済できる保障がある人間などいないはずだ。それでも現代では大学を卒業しなければ就職で圧倒的に不利になる。その後何十年も続く人生を考えれば、借金をしてでも進学せざるをえないのだ。

しかし、近年コロナによる経済の悪化、未曾有の物価高と、経済的に追い込まれるような出来事が続いている。社会に出た瞬間数百万の借金を負い、中年になるまで返済をする。何があっても働き続け、どれだけ苦しくても支払いを滞ってはいけない。