大嵜さん「有馬記念のトウカイテイオーは神話である」(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
3度の骨折を経験しながら復活を遂げた「トウカイテイオー」。その姿は、見るものに大きな感動を与えた。美しい流星と静かな瞳を持つ、この不屈の名馬が駆けぬけた栄光と挫折のドラマとは。今回『トウカイテイオー伝説』から、文筆家、心理カウンセラーの大嵜直人さんの寄稿文を紹介します。その大嵜さんいわく「トウカイテイオーの足跡は、日本競馬に授けられた『神話』の一つ」だそうで――。

日本競馬の「伝説」

オグリキャップのラストランとなった1990年の有馬記念を「伝説」と称するならば、その3年後の有馬記念のトウカイテイオーは「神話」である。

「伝説」とは、ある種の非日常的な体験が、多くの人に語り継がれていくことを指す。その意味で、オグリキャップの90年有馬記念は、「伝説」と言える。

現役最後の年の秋、ピークはもう過ぎた、終わった、燃え尽きたなどと思われていた「芦毛の怪物」が、武豊騎手の手綱に導かれて復活、大団円となった90年の有馬記念。

第二次競馬ブームを巻き起こしたオグリキャップのラストランは多くの感動を呼び、そこから競馬の魅力に取り憑かれたファンは少なくなかった。

90年の有馬記念と聞けば、多くのファンがそこに「あの」という枕詞を導くほどに、その走りは日本競馬の「伝説」になった。