大愚和尚「苦しみをつくり出すのは他人ではなく『自分の心』」(写真提供:Photo AC)
「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまく行かず苦しい」など、思い通りにならないことや、さまざまな人間関係に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。佛心宗大叢山福厳寺住職の大愚元勝さんは、仏教の思考法に基づいて、自分の心との向き合い方や負の感情の手放し方を伝えています。大愚和尚いわく「苦しみをつくり出すのは他人ではなく『自分の心』」なのだそうで――。

苦しみをつくり出すのは他人ではなく「自分の心」

すべての苦しみは、自分の内側で生まれます。自分の心こそが、苦しみを生み出す製造工場なのです。

では、いったいなにが原因で、心の中に苦しみが生まれてしまうのか?

そもそも苦しみを生み出す「自分の存在」とはなんなのでしょう?

私たちが「私」と称しているもの。それは“自我”と呼ばれるものです。

自我とは本能に基づいた絶対的に拭い去れないひとつの情動のこと。

この世で、最も尊重されて、最も優先されなければならないと信じてやまない存在が、ほかの誰でもない「私」なのです。

人間に限らずすべての生きものにも当てはまることですが、「私」という最重要の存在が、脅かされたり、傷つけられたり、なにか危機的な状況に陥ったりした際には、それを本能的に守ろうとしますよね。

この防衛本能のことを「我(が)(自我)」といいますが、これがわれわれが認識している「私」であり、苦しみを生む原因となる「自分」なのです。