イラスト:ネコポンギポンギ
内閣府が発表した、60歳以上の男女を対象に行われる「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」(令和3年)によると、生きがい(喜びや楽しみ)を感じている割合は、平成25年度は79.2%だったのに対し、令和3年度は73.2%と減少がみられました。そんな中でも、生きがい(喜びや楽しみ)を感じるときについて、多い順から「孫など家族との団らんの時」、「おいしい物を食べている時」、「趣味やスポーツに熱中しているとき」という結果に。3番目に多かった趣味やスポーツをする時間について、子育てや仕事に一区切りついた人生の後半に、あり余る時間を使って始めたことが生きがいになることもあるようです。坂下美恵子さん(仮名・茨城県・主婦・63歳)が、清掃員の仕事をリストラされ、暇を持て余していたときに出会ったのは――。

手に取った雑誌で見つけたのは

娘が中学生と小学生になり、子育てが一段落した頃、私は人材派遣センターに登録し、市内の大手病院で清掃員の仕事に就きました。パートとはいえ、夏と冬にボーナスも出て、まずまずの職場でした。

けれど、ある日突然マネージャーがやってきて、「すまないが、来月いっぱいで仕事は打ち切りになる」と言うのです。病院の経営状況が思わしくなく、立て直しを図るためだと。

4年間働いて、給与の大半を娘2人の進学に備えて貯金してきました。長女は女子大に合格していましたし、突然のリストラではあっても、さほどの不都合はありません。

とはいうものの、仕事がなくなった私は暇を持て余しました。

ある日、美容室に行った時のことです。待合室に置いてある婦人向け雑誌を何の気なしに手に取りました。読者のコーナーに、ある若い主婦の記事が。「私の投稿ライフ」という見出しで、文章をさまざまな雑誌に投稿しており、採用されると謝礼として、クオカード、商品券、図書カードなどの金券がもらえると書いてあります。それらを金券ショップに持ち込んで現金化し、へそくりしていると。

世の中にはこんなふうにお金を稼いでいる人がいるのかと、驚きました。そして、散髪を済ませて帰途につく私の頭には、その主婦の話が残り続けたのです。