「こんな不摂生をしていたら長生きはできないだろうと、漠然とした予感はあって」〈撮影:玉置順子(t.cube)〉

 

女優業のかたわら、趣味を生かして幅広い活動を続けてきたとよた真帆さん。夫で映画監督の青山真治さんを亡くし、失意の中にいたとよたさんの悲しみを癒やしてくれたのは、日常の小さな「楽しいこと」だったといいます──。
(構成:篠藤ゆり 撮影:玉置順子(t.cube))

予感していた早すぎる別れ

2022年3月21日、夫が亡くなりました。彼を見送ってからの月日は、あっという間だった気もするし、別れの日が遠い昔のようにも感じます。

頸部に食道がんが見つかったのは2021年春。腫瘍はすでにかなり大きく、手術をするとなると声帯まで摘出しなくてはならないということでした。やはり、声は残したい。そこで、腫瘍を小さくするための抗がん剤や放射線による治療を受けることになりました。

治療の結果、がんが小さくなり、21年の12月には声帯を傷つけることなく、患部をほぼきれいに取り除くことができたんです。

よかった、よかったと喜び合ったのに、1ヵ月もしないうちに再発し、あちこちに転移してしまって。亡くなったのは彼が57歳の時でしたから、早すぎますよね。