(イラスト:大野博美)
今年の12月8日で太平洋戦争が始まった1941年から82年が経ちます。戦争を知る世代が高齢化し、生々しい戦火の記憶が薄れつつある日本。一方、世界に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突のほか、紛争が長期化している国もあります。戦争がもたらすものは、どれほど悲惨なものか。そしてそこから立ち上がるための道のりとは。昭和6年生まれの斎藤ヒサさんは、当時子どもながら戦禍を乗り越えてきました。「死んだほうがマシ」と思った戦時下の学徒動員。がむしゃらに働いた高度成長期。そして旅行三昧の定年後。今は仲間たちと電話で近況を語り合う日々に。

前編よりつづく

第二の人生は旅のとりこ

高度成長期を駆け抜け、私は定年を迎えます。第二の人生のスタート地点に立った時、戸惑いました。がむしゃらに働くことしか考えてこなかったからです。

「さあこれからは、毎日が日曜日!今までいっぱい働いてきたから、ゆっくり休もうかしら。でも、退屈かも。どうしよう」とこぼすと娘が、「お母さん、戦争で修学旅行もなかったと言っていたでしょう?旅行したらきっと楽しいよ。退職金を全部使って楽しむの」と提案してくれました。

そうだ、確かに学生時代はとても修学旅行どころでなかった。美しいものを見て歩く旅をしよう!

ちょうど、県の旅行会社で九州一周団体旅行の募集を見つけ、さっそく申し込んでみることに。今まで住んでいる県内から出ることさえなかったので、何もかも驚くことだらけです。