経済産業省によると、日本で上映された映画の本数は2010年の716本に対し、20年には1,017本と1.4倍以上に増加しています。そんな映画業界でも知らない人のいない名物宣伝プロデューサーが叶井俊太郎さん。数々のB級・C級映画や問題作を世に送り出しつつ、会社は倒産。“バツ3”という私生活を含めて波乱万丈な人生を送ってきましたが、膵臓がんに冒され、余命半年との診断を受けています。「残りの時間は治療に充てず、仕事に投じることに決めた」叶井さんが、仲の良い小説家・岩井志麻子さん、編集者・中瀬ゆかりさんとあらためて「余命半年論」について話し合ってみると――。
葬式はみんなの意見に従う
叶井 でもまあ、2人とも、あんまり末期がんの人と話す機会ないじゃん?
中瀬 ないし、たぶん普通はこんなに笑いながら話さない。やっぱりあんたは大した男だよ。最初に会ったときから思ってたけど。
叶井 実際、もし医者から「あなたは余命半年です」って宣告されたら、どうする?
岩井 私はね、怖さを払拭するという意味でも、おもろい葬式にする計画を立てるかなあ。棺を私の好きな豹柄にして、もちろん遺影も豹柄の服に豹メイクでキメて、あと私は中国の獅子舞が大好きなんよ。春節とか国慶節とかで見る「シャンシャンシャン」っていう、毒虫みたいなやつ。あれの葬式バージョンがあるので、中華街にご協力いただいて、お祭りのような葬式にしたい。
なんなら墓石も豹柄にしたいんやけど、探せば豹に見える石があるんちゃうかな? その豹柄の墓石がインスタ映えスポットになったりして、ついでに拝んでくれたらいいな。
叶井 死んだ後の準備をしたいわけね。その半年のうちに。
中瀬 叶井くんは、そういうのはしないの?
叶井 まったくしない。むしろ仕事を前倒ししてるから。今作ってる『ホラー版 桃太郎』も「オレ、もう死ぬから」って前倒ししたんだよ。
中瀬 じゃあ「こんなふうに見送ってくれ」みたいなことも言ってないんだ?
叶井 言ってないね。なんか「葬式はやったほうがいい」ってみんな言うから、くらたま(妻の倉田真由美さん)に「みんなの意見に従うよ」とは伝えたけど。
中瀬 あはは、みんなの意見。